壊れるほどに愛さないで
私は、友也の背中を眺めながら、浴室に向かう前に、リビングに置いていた鞄の前にしゃがみ込んだ。そして、スマホを鞄から拾い上げると、すぐに雪斗からの連絡が、きていないか確認する。

こんなに友也に優しくしてもらって、友也のストーカーの疑惑も晴れたのに、雪斗の事ばかり考えいる私は、最低だ。

「美織、スープの味、トマトとコンソメどっちがいい?コンソメ?」 

雪斗からは、特にメッセージは来ていない。

「えと、トマト」

「え?トマト?珍しいね、了解」

(あれ、確かに)

何故だか咄嗟にトマトスープだと答えたが、私は、コンソメスープの方が好きだ。だから、いつも友也の家に泊まった際も、朝は、コンソメスープを作ることが多かった。

「友也、お風呂入ってくるね」

「うん、あったまっておいで」

私は、立ちあがろうとして、視界が急に、ぐるんと回る。

「っ……きゃっ……」

身体のバランスを崩して、倒れそうになった私を友也が、慌てて抱きかかえた。

「美織っ?!大丈夫?どしたの?」

視界は、暫く回転していたが、すぐに正常に戻っていく。

「ごめ……目眩して……」

「目眩?」

友也が、すぐに私の額に手を当てた。

「熱は……なさそうけど、いつもより、少しあったかいかな……」

「友也、もう大丈夫だから」

「本当に?」

心配そうに、私を覗き込む、友也の手を借りながら、私は、身体を起こす。

ーーーーその途端に、胃から込み上げてくる吐き気に思わず口元を覆った。

「ンンッ」

「美織っ?!」

私は、口元を押さえたまま、慌ててトイレに駆け込むと、すぐに胃液を残らず吐き出した。

「けほっ……はぁっ……はっ……」

「美織っ、大丈夫?」

「友、也……」

友也が、私の背中を摩りながら、難しい顔をしている。
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