壊れるほどに愛さないで
「おいで、少し横になろう」

友也は、私を横抱きにすると、そっと、ベッドに寝かせた。

「ちょっと、脈から測るね……もう、医大生だったって言ったし……」

そういうと友也は、すぐに真剣な顔で時計の針を見ながら、脈を測り、そのあと、私の胸に手を当てて、鼓動の早さも確認していく。

「……友也、ストレス、かな?」

元々、風邪は、拗らせやすかったが、心臓移植をしてから、風邪も引きにくくなった。何の症状もないのに嘔吐するなんて、不安だけが募る。

友也が、唇を湿らせると、言いにくそうに口を開いた。

「美織……生理遅れてない?」

「え……?」 

「今月きた?」

「……そういえば……」

ゆっくりと起き上がり、寝室の壁掛けのカレンダーを見つめて、ドキンとする。生理は、今までもほとんど遅れた事がないのに、もう2週間も過ぎている。

「友也……私……」

友也が、私の体を包み込んだ。

「一回、病院で診てもらおう?今日は、仕事を急には休めないけど、明日なら僕も一緒にいけるから……美織は、今日は、会社は休もう?」

「で、も……」

「明日やってるかな……」

友也は、そう呟くと、スラックスのポケットからスマホを引っ張り出し、レディースクリニックを検索していく。
< 238 / 301 >

この作品をシェア

pagetop