壊れるほどに愛さないで
勇気の声が、ヘリウムガスの男の声に変換されて小刻みに足が震える。体が恐怖で硬直して壊れた機械のように動かない。

(だめ……逃げなきゃ……)

目だけで少し振り返れば、非常口の扉が見えた。

「ねぇ、ちょっと話そっか」

(あそこに入って、1階まで行けば雪斗に会えるかもしれない……)

さらに後退りしようとした私は、自分の足に足を引っかけてトンと尻餅を付いた。

「あっ!大丈夫?!」

勇気が、あっという間に私の目の前にくると、しゃがみ込んだ。

「手かすよ?」

「や……めて」

差し出された掌を私はパチンと弾いた。

「痛って!」

眉を顰めて、目を見開いた勇気と瞳が合った瞬間、はち切れそうなほどに大きく心臓が跳ね上がる。

「嫌っ!こないで!」

「なっ、大きな声だすなよっ」


────その時だった。

「美織!」
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