壊れるほどに愛さないで
「あれに確か、写真挟み込んでたよな……」

俺は、本棚の端から、彼女が、好きだった純愛小説を取り出した。パラパラと捲れば、彼女とのささいな会話が、脳内再生されていく。

『すっごく感動して、涙が出ちゃった』

『ねぇ、一緒に観に行こ』

俺は恋愛ドラマも恋愛漫画も興味がなく、恋愛映画となれば、決まって居眠りして、よく怒られた。

『寝ても良かったら』

そう答えた俺に、彼女は、何て言ったんだっけ?

小説の最後のページには、俺の撮った彼女の写真が、挟み込んである。

コスモス畑をバックに、こちらに笑顔を向ける彼女は、やはり、美織とは雰囲気は似てるが、勿論、同一人物ではない。

「どうかしてんな、俺。てゆうか、下手くそだろ」

この時は、なかなかうまく撮れたと思っていたが、今みると、アングルや、光の差し込み方等、まだまだ技術の浅い拙い写真だ。

それでも、この写真を渡した時、彼女が、天使のように笑った事を思い出す。俺は、再び、ソファーに体を沈めた。
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