壊れるほどに愛さないで
ーーーー僕は、夢を見ていた。

シックな黒のワンピースに白いコートを着た美野里(みのり)が、白いコートを羽織っている。僕は、あの日と同じように手を伸ばしていた。

『美野里、待って!』

『いやっ、離して』

僕は、力一杯、美野里の手首を掴み直した。

「行かない、で……」


お願いだから、僕の側にいて。じゃないと、僕は……。


美野里ーーーー。


布団を捲り上げて、慌てて起き上がれば、僕は、夢を見ていたことに気づく。いつもこの時期に必ず見る夢だ。

「はぁっ……はっ……」

僕の呼吸は、浅く早く、全身から噴き出るように汗をびっしょりとかいていた。思わず、シーツに手を伸ばしながら、隣を見れば、美織の姿はなく、僅かに開いた寝室の扉の向こうに、キッチンで料理をしている、美織の後ろ姿が見えた。

僕は、安堵と共に大きくため息を吐き出した。
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