壊れるほどに愛さないで
起き上がれば、いつもは鍵をかけてある、デスクの引き出しを、閉め忘れていることに気づいた。

うっかりしていた。恐らく、鍵は、一晩中つけっぱなしになっていた筈だ。

僕より先に起きた美織は、見ていないだろうか……。

ーーーー美織にだけは、どうしても、見せられない秘密を仕舞ってあるから。


「友也?起きた?」

ドット柄のエプロン姿の美織が、寝室扉から顔を出した。僕は、また汗が噴き出そうになる。

「……あぁ、おはよ」

「おはよ」

美織が、クスッと笑った。

「何?」

「友也、私の名前を寝言で言ってたから」

「……そっか……恥ずかしいな……」

(違う、僕が、無意識に名を呼んだのは、恐らく美野里の方だ……)

「もうすぐ、ご飯できるよ、着替えたら来てね」

「ありがとう、すぐ行くね」

美織は、お玉を片手に、またキッチンへと戻っていった。僕は、胸を撫で下ろしながら、引き出しの中に、変わりがないことを確認してから、鍵をかけた。
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