壊れるほどに愛さないで
雪斗と事務所に戻ってきてすぐだった。

「雪斗!久しぶり」

朝礼は、薬局への卸しの関係で、遅れて出勤してきた、高瀬恭平(たかせきょうへい)が雪斗の肩を抱くと、自社製品の栄養ドリンクをデスクに置いた。

「おっ、恭平!まじで久しぶり」

恭平と雪斗は、目線を合わせて笑いあった。

「え、恭平くん、待野君と知り合いなの?」

私が、尋ねると、誰もいない工藤チームのデスクから、和も言葉を重ねた。

「え?恭平、聞いてないんだけど?」

コロコロと椅子を両足で動かしながら、和が私の横まで移動してきた。

「大学一緒でさ、写真同好会も一緒に入ってて。な、雪斗。で、偶然、就職先も一緒」

「恭平は、親のコネでしょ。第一エリアチームの高瀬支店長の息子じゃん」

「なんで和が、不貞腐れんの?親のスペックあれば、和も俺と結婚しても心配ないっしょ?」

恭平は、鞄から和の好きなモロロフのチョコレートの箱をコトンと置くと頭を撫でた。途端に和の顔が真っ赤になる。

「恭平の自慢の彼女って綾瀬さんだったんだ?」

「可愛いだろ、マジで手だすなよ」

恭平が、無邪気にニカッと笑った。

「はいはい、恭平に殴られたくないんで」 

雪斗が、肩をすくめてみせた。 

「あ、そうだ、雪斗、今度の大学の展覧会いく?」 

「あー、ラインに案内来てたな、恭平は?」

「俺は、パス、和と式場見に行くんで」

「もう!恭平!まだ内緒だよ」

パシンと、和にお尻を叩かれて、恭平が大袈裟に痛がる。

「恭平、今から尻にひかれてんだな」

「こら、待野!」

「わ、俺は、叩かないでくださいよ」

雪斗を呼び捨てして、睨んだ和に、私は、クスクスと笑った。

< 61 / 301 >

この作品をシェア

pagetop