壊れるほどに愛さないで
「俺、写真が趣味なんです。去年撮ったんですけどね。時期が、一月だったんで、植物達もまだ冬眠中で、ほとんど雪一色だったんですけど」 

冬眠中という言葉が、可愛らしくて、思わず私は微笑んでいた。

「そうなんですね。でも綺麗……朝日が雪に溶け込んでるみたい」

「雪の季節になったら、見せてあげますよ、本物の方が、感動するんで」

雪斗が、切長の瞳を細めて微笑んだ。

社交辞令だと分かってる。いつ行くかもわからない、というよりも、本当に行く事は、ないのが普通だろう。ただの会話の流れの一つなのだから。

「また……見せてください」

それなのに、こんなことを自分が、口にするのは普通じゃないと思った。

雪斗が、クスッと笑う。

「美織さん、敬語やめませんか?プライベートでは、雪斗でいいんで」

雪斗といると、何が、普通なのか、わからなくなる。心臓が煩く跳ねて、呼吸が浅くなる。

「あ……うん」

出来上がったコーヒーの入ったマグカップを持ち上げながら、私は小さくつぶやいた。
< 60 / 301 >

この作品をシェア

pagetop