壊れるほどに愛さないで
雪斗から、離れようとして、私が、雪斗の胸に両手を突くと同時に、雪斗の大きな掌が、私の頬に触れた。身体は、小さくビクッと震える。

「……キス、していい?」

雪斗もまだ、アルコールが残ってるのかもしれない。熱を帯びている雪斗の瞳から、私は、瞳を逸らせないまま、言葉も何一つ出てこない。

「嫌なら言って……」

嫌だって言わなきゃいけないのに。
それに私には恋人がいること。

雪斗に触れられた場所から、心臓が、持っていかれたみたいに、苦しくなる。

触れられることが、全然嫌じゃなくて、心が、雪斗を勝手に求めてる。

ゆっくりと確かめる様に近づいてきた雪斗の顔を見ながら、私は、瞳を閉じた。


(あ……)

ーーーー何だろう。

唇が重なった瞬間、雪斗の唇をずっと前から知っているようか気がした。

唇が触れる度に、心が吸い寄せられるように、雪斗が、あっという間に心の中に棲みついていく感覚にこわくなる。

溺れてしまいそうで。
心が、雪斗だけを求めて壊れてしまいそうで。

「美織さん……」

軽く触れた唇は、何度も繰り返して、深くなっていく。
< 80 / 301 >

この作品をシェア

pagetop