六月の月に愛を誓う。
「はーもうっ!美緒が指輪交換するまでは泣かないって決めてたのに…!メイクも落ちちゃって本当最悪だよ。ちょっと私、メイク直してくるね。どうせもうすぐあいつも来るだろうしっ」

「あはは、うん。わかった」


メイクポーチを持った梨花が部屋を出て行こうとし、ふと何かを思い出したかのように振り向いてきた。


「あ、一番大事なこと言うの忘れてた」

「ん?」

「美緒、結婚おめでとう」


満面の笑顔で最高の言葉をかけてくれた親友に、私も満面の笑顔で返す。


「ありがとう!」


梨花が出て行って一分くらいが経った頃、外からバタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。

梨花が言っていた通り、本当に走ってきたことに思わず一人で笑ってしまう。


扉に背を向け、愛しい彼が入ってくるのをじっと静かに待つ。

しばらくして扉がゆっくりと開く音がして、中に誰かが入ってきた。


恐る恐るといった感じで近づいてくる足音を聞きながら、ふと私たちの出逢いの日を思い出した–––––。
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