大嫌いで愛しいもの

沈黙

『沈黙』



どうして黙っているの?

考えても,分からないでしょ,その子の気持ち。

だからあなたは訊ねるでしょう。

だけど,その子は答えませんよ。

答えたくないから。

それだけが答え。

その子の気持ちを知りたいなら,あなたは何故その子が言いたくないのかを考えなくてはいけないし。

その子の気持ちを知りたいなら,逆に何も考えず,忘れてあげなくてはいけない。

暴きたいなら,前者。

思いやるなら,後者。

その子が話したならば,きっと何かを肯定するか,否定するでしょう。

それは,誰かを傷付けるのでしょう。

思いやられているのはどちら?

その子は誰に言われるまでもなく,口を塞がれるまでもなく。

自分でそっと,口に手を当てています。

せめてもと,シンプルな問いにじっと目線だけ返しています。

あなたが,諦めてくれるまで。

怒られても,呆れられても。

嫌われるところまで行き着いても。

黙っています。

だけど私は



『私はこうとしか思えないから。どうか,お願い。聞かないで』



口を開くだけで済む言葉を,その子にプレゼントは出来ないのです。
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