内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「卓也さん、すごいです。お父さんだとすぐにわかったのかもしれませんね」

「そうだと嬉しいな」

保育士の先生は他の園児たちが待っているので、挨拶して保育室へ引き返した。

双子をベビーカーに乗せて卓也が押し、並んで保育園を後にする。

「果歩にそっくりだな。すごく可愛い」

「えっ、目も鼻も口も、どこを見ても卓也さん似ですよ」

「俺ってこんなに可愛いか?」

卓也が驚いた顔でベビーカーの中の双子を覗き込むから、果歩はおかしくて笑う。

(思い出した、この気持ち。卓也さんが隣にいてくれると、ホッとして、楽しくて、少しドキドキする)

別れたのは一昨年の夏で、一年九か月ほど前だ。

久しぶりに会ったのでしばらくはぎこちない態度になりそうなのに、まるで空白の期間がなかったかのように会話が弾んだ。

子供の話をしながらゆっくりと歩き、自宅までもう少しというところで、卓也が急に横道に進路を変えた。

「卓也さん、そっちじゃないですよ」

細い路地に入った卓也を慌てて追いかけて止めたら、ニッと笑った彼が振り向いた。

「家の中だとお兄さんの目があるから」

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