愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 この頃から、愛理の様子がどうもおかしかった。元気がないというのか一緒にいてもどこか上の空で、心配はしていた。

 けれど、ちょうどKMシステムズで働いていたという江藤秀美さんと会って話ができることになった。彼女は任期付きの社員として働いていたそうだが、その際に契約書の改竄や不当な扱いを受けたらしい。

 その資料も直接得られると聞き、愛理と会う約束をしていたが、仕事と言って断りそちらを優先した。

 罪悪感がなかったわけじゃない。でもこれでKMシステムズの悪事を白日の下に晒せるかもしれない。やっと長年の雪辱を果たせるんだ。

 ところが、江藤さんを駅に送っていく帰りに愛理と遭遇し、一気に血の気が引いた。目が合った瞬間、愛理は逃げるように走りだし俺もすぐさま追いかける。

 幸い彼女を見失わずに腕を掴んだ。

「愛理」

 とにかく事情を説明しなくてはと思い、息も切れ切れに説明していく。

「違……誤解、しないで、ほしい。……隣にいた女性は仕事で付き合いのある人で……」

 やましいことはなにもない。事情を説明したら愛理はわかってくれるはずだ。無駄に疑ったり嫉妬するような女性じゃない。

「別れよう」

 ところが、愛理の口から発せられたのは思ってもみない一言だった。あまりの衝撃に、一瞬頭が真っ白になる。続けて俺はとにかく必死で弁明しはじめた。

「ごめん。勘違いとかじゃなくて愛理を傷つけたらなら謝る。でも信じてほしい。今日は本当に仕事で彼女とはなにも」

「うん。わかっているから。紘人は悪くない。でも別れてほしいの」

 こちらの言い分を遮り、愛理は言い切った。そこで彼女が冗談でも俺の反応をうかがっているわけでもないと改めて実感する。
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