愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「私はただ……目が覚めたときに紘人がいなくて驚いて……」

 たどたどしく言い訳めいたものを口にするが、次第にその勢いは削がれていく。一拍間を空けて改めて彼を見つめた。

「一緒にいて……ほしい」

 降参して本音を告げる。ずっととは言わない。いつもとは言わない。けれどせめて体を重ねたあとくらいは、私といるときは……。

 発言してからはたと思い直す。これは俗に言う重い女なのでは? 女子高生じゃあるまいし、お互い大人で社会人なのになにを言っているんだろう。

 あきれられたり、鬱陶しいと思われるかも。

 後悔の波にさらわれそうになったところで突然強く抱きしめられた。次の瞬間、紘人が私の隣に体を横たわらせ、抱きしめられたままの私は必然的に彼と向き合う形になる。

「寂しがり屋だな、愛理は」

 軽い口調で呟かれ、頭を撫でられる。それをどう捉えたらいいのか迷い、顔を上げた。なにかしらフォローするべきか。

 ところが目が合った紘人は、予想に反して真剣な面持ちをしていた。

「俺が一番大切なのは愛理なんだ。愛している」

 照れる前に彼の迫力に圧され、思わず息を呑む。続けて紘人は額をこつんと重ねてきた。

「さっきはああ言ったけれど……足りないのは俺の方なんだ」

 なにか返す前にキスで唇を塞がれる。

 ずるい、いつもそうだ。

 そうやって隙のない表情で迫られたら私はなにも言えない。なにも聞けなくなる。

 言葉で、態度で嫌と言うほど愛されていると実感する。そのたびに自分の気持ちも大きくなっていく。私も紘人が好き。大好き。

 彼に身を委ねて甘い快楽の波に溺れながら、ぼんやりと考えた。

 やっぱりさっきの心の声は訂正しよう。

 一緒にいてほしい。できればずっと。一生そばにいたいの。

 それが私の本音だ。視界を滲ませる涙は、生理的なものなのか、感情が昂ったからなのかわからなかった。
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