愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「うん。ごめんね。真紘、起きないままで……」

 彼としては存在を知ったばかりの自分の息子ともっと触れ合いたかったに違いない。とはいえ、無理やり起こすわけにもいかないし。

「あまり遅い時間だったらまた真紘は寝ているかも」

 私の答えに紘人は困惑気味に笑った。

「真紘はもちろん、愛理にも会いたいんだ」

 そう言ってさりげなく唇を重ねられる。目を閉じる余裕もなく呆然とする私に紘人はまた連絡すると言ってアパートを後にしていった。

 しばらくその場を動けず、なんだか夢を見ている気分だった。けれど唇に残る感触は本物で、現実なんだと受け入れていく。

 そのとき、母から真紘が起きたと呼ばれ、私は慌てて彼の元へと向かった。ほどよく眠ったので機嫌がいい。抱っこしている母から真紘を受け取る。

「真紘、よく眠ったね」

「あー。たっ」

 汗を掻いて湿っている彼の髪をそっと撫でた。

「お父さんに会って……真紘はどうだった?」

「んー」

 さりげなく問いかけた私に対し、偶然にも考えるような仕草を見せた真紘につい噴き出してしまった。まったく、どこまでわかっているのか。

 彼への想いはともかく真紘のことを考えたら、私はやはり紘人と結婚するべきなのかもしれない。

 とりあえずおむつを換えよう。自分の子どもがこんなにも愛しく思うのは、私が母親だからなのかもしれない。でもおそらく真紘が紘人の子どもだからっていうのも大きいんだろうな。改めて紘人本人に会って感じた。
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