愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 頭がぼうっとしてくる。しかし紘人の手がパジャマ越しに胸元に伸ばされ、反射的に体が震えた。

「あっ」

 顎を引きそうになったが強引に口づけが続けられる。その間も彼の手は止まらず、直接触れていないのにぴりぴりと肌がざわつく。

「だ、め」

 なけなしの理性で、抵抗を示す。流されたい気持ちが勝るギリギリのところだった。

「だめ?」

 不敵に尋ねられ、ぎこちなく頷く。もっと触れてほしい気持ちも嘘じゃない。ただ、状況が状況だ。

 ちらりと隣の部屋に視線を送ると紘人も納得した面持ちになった。軽く息を吐いたあと、ぎゅっと抱きしめられる。

「来週末、空けておくから三人で一緒に過ごさないか?」

 彼の提案に目をぱちくりさせる。私が答える前に紘人は力強く続けた。

「どこかでかけてもいいし、俺のマンションでゆっくりしてもいい。結婚の準備も進めたいけれど、もっと愛理と真紘と一緒にいたいんだ」

 そこまで言われて断る選択肢はない。忙しい彼が私たちのために時間を割こうとしてくれている。真紘のためにも、紘人と過ごす時間を増やしたほうがいい。なにより……。

「うん。真紘も……私ももっと紘人と一緒にいたい」

 離れていた時間を埋めるために、一度壊れた関係を修復するために。そして自分の気持ちをなんとか切り替えたい。

 さっき紘人を拒んだのは、隣の部屋で眠る真紘が気になったのも本当だ。けれど、それだけじゃない。どうしてもまだ紘人にすべてを傾けられない。いいのかな。私にその資格はある?

 彼に対して残るわだかまりがいつか消える日が来るのだろうか。
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