愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました

第三章 恋は胸ではなく目に宿る

　紘人と約束した翌週の土曜日、私たちは動物園に行くことにした。発案はもちろん私で、絵本やぬいぐるみで動物に興味を示す真紘に本物を見せてあげたいと前から思っていたからだ。

　それに園内には桜の木が植えられていて今、ちょうど見頃を迎えている。

「おはよう。愛理、真紘」

「わざわざ家までごめんね」

　現地で待ち合わせをしようと言ったのに、紘人はアパートまで迎えに来ると譲らなかった。私の車につけているチャイルドシートを付け替えないと、と話したらわざわざ新しいものを用意すると言われ、どれがいいのかと相談される。

　安い買い物でもないのにとためらったが、どっちみちこれから必要だからかまわないと紘人は笑った。本当に真紘や私と一緒に暮らすことを考えてくれているのだと実感する。

　そんな彼の思いに私も応えないと。

　今日の紘人は、ストライプ模様のグレーのVネックに、黒のカーディガンを羽織り、ベージュのチノパンを合わせている。ここ最近はスーツ姿をよく目にしていたのでなんだか新鮮だ。

　逆に付き合っていたときを思い出す。清潔感があってシンプルなファッションを彼はよく好んでいた。すらりと細身の彼にはよく似合う。

　私は花柄のシフォンブラウスにジーンズと動きやすさ重視だ。真紘に引っ張られるので髪はまとめあげ、ネックレスもつけない。真紘はボーダーのシャツにズボンで、動物園を意識して胸には大好きなライオンのワンポイントがあるものを選んだ。