愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「そ、そんな。本来はこちらがお伺いするべきで」

「いいよ。来るって言うんだから来てもらえば」

 慌てる私に対し、紘人はどこか面倒くさそうに返す。真紘をちらりと見てから、運転席のほうに身を乗り出した。

「ご両親……なんて?」

 突然聞かされた私と真紘の存在をどう受け止められたのか。マイナスの感情を抱かれてもしょうがない。

「めちゃくちゃ怒ってた」

「ええ!?」

 覚悟していたとはいえ、あっけらかんと返されつい大声をあげてしまった。全身の血の気が一気に引く。

「俺に対して。かなり説教されたよ」

 ところが紘人が苦笑しながら続けた言葉に、目をぱちくりさせる。

「愛理と付き合っていた頃、両親に話はしていたんだ。でもその後、彼女とはどうなっているんだって聞かれて、仕事が忙しくて別れたって伝えていた」

 ご両親はどちらかといえば紘人に早く結婚してほしかったらしく、私との交際の報告を受けてそのまま結婚するのかと思っていたら別れてしまい、それから紘人が彼女もつくらずにいるのを気にしていたんだとか。

「別れた彼女をずっと引きずっているって言っていたんだ」

 それはどこまで本当なんだろう。口には出せず、彼の話に耳を傾ける。

 突然、息子から別れた彼女が自分の子どもを生んでひとりで育てているという内容を聞かされ、寝耳に水だったご両親はたいそう驚いたそうだ。

 そのあとで、彼女を引きずるくらい好きだったなら、もっと早く連絡を取るなり、会いに行くべきだったのでは?と責められたらしい。
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