愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 お母さんに至っては、いかに女性にとって妊娠と出産が一大事で育児が大変かを懇々と語られたそうだ。

 それを聞いて、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。紘人はもちろん、ご両親にとっても私の独断で孫の存在を伝えられずにいたんだから。

 肩を縮めていると紘人が明るく続けた。

「愛理と真紘の写真を送ったら、すごい勢いでふたりともすぐにでも会いたいって言い出して……。お母さんの予定も聞いておいてもらえるか?」

「うん、確認しておくね」

 返事をしてからふと思い出す。そういえばこの前、家に来たときに紘人が真紘の写真を撮っていた。そのとき私が抱っこをしていたのも写真に収めていたような。

 なんだか気恥ずかしい。けれどご両親が激怒したり、結婚に反対していないのならよかった。そこで別の角度に考えが移る。

「父へは……」

「ああ。柏木社長のところにも行かないとな」

 ぎこちなく切り出すと、紘人はさらりと返してきた。崎本さんとの結婚がだめになった件は父には伝わっているかもしれないが、まさか彼と私が結婚するとは父も思っていないだろう。

 それにしても本当のところ、紘人は今、父をどう思っているの? 本気でKMシステムズが手に入ったから過去の件は水に流している? 父は彼をどんなふうに思っているんだろう。

 胸につかえているいくつもの疑問を、話の流れでこのまま尋ねようとしたそのときだった。
< 55 / 123 >

この作品をシェア

pagetop