愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「そういえば、さっき寝室でどうしたの? もしかしたら私が起きるのを待っていてくれた?」

 モニターがあるからと呼びに来てくれたのだとしたら、眠っていて申し訳なかった。私の問いかけに紘人は目を見張ったあと、口角を上げた。

「愛理は寂しがり屋だから……目が覚めたときにそばにいてやりたいと思ったんだ」

 彼の言い回しには、なんとなく覚えがあった。

『私はただ……目が覚めたときに紘人がいなくて驚いて……』

『寂しがり屋だな、愛理は』

 昔のやりとりを思い出し、かっと顔が熱くなる。

「あ、あのときは……」

 恥ずかしさで言葉が続かない。このままでは再びからかわれる。それを覚悟していたら、彼の口が動いた。

「それだけじゃないんだ」

 紡がれた一言は予想外のもので、思考が停止する。続けて紘人は私から視線を逸らし、指を組んで前を見つめた。

「怖くなったんだ。全部夢なんじゃないかって……愛理や真紘がいないリビングにひとり戻ってきて、そんな不安に襲われた」

 ため息を吐きなが自嘲的に呟く紘人に、胸が締めつけられる。

『本当に……夢みたいだ』

 理由をきちんとはっきりさせないまま彼の前からいなくなり、紘人を傷つけた。

 ほぼ無意識に立ち上がり、彼の正面に立って紘人の頭をぎゅっと抱きしめる。

「夢じゃない」

 強く言いきって、さらに続ける。

「夢じゃないよ。私も真紘もそばにいる。紘人に……そばにいてほしいの」

 許されるのなら。
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