愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 わずかに残った冷静さを崩さないように必死で頭を働かせる。けれど紘人はおかまいなしに私を懐柔しにかかった。

 頬に添えられていた手が耳に伸ばされ、指先が私の耳の裏側に沿わされた。驚きで目を見開き、離れようにも口づけは続けられたままでゾクゾクと体が震える。

「んっ……やっ」

 くぐもった声はキスで封じ込められ、私とは対照的に紘人は目を細めると、今度は彼の手のひらが服越しに脇腹を撫でた。その触り方が妙に意図的で思わず身をよじりそうになる。

 けれど次の瞬間、紘人の手がブラウスの裾から滑り込んできて素肌に触れた。

「ちょっ」

 さすがに唇を離して抵抗を試みる。しかし紘人の手はくすぐるように脇腹から正面に移動していき、動きを止めない。

「だ、め」

 彼の肩に手をついて、なんとか自分を支えながら訴える。けれど紘人は余裕たっぷりに耳元で囁いてきた。

「ん。触るだけだから」

 そんな言い訳通用しない。そう返したいのに、久しぶりに直接肌に触れられる感覚に腰が砕けそうになる。

「愛理は温かいな」

 それはこちらのセリフだ。乾いた指先が皮膚を撫で、手のひらが体温を分けるようにねっとりと肌を滑った。そこから化学反応でも起こしたかのように、触れられていない箇所まで鳥肌が立っていく。内側からじわじわとなにかが押し寄せてくる。

 歯を食いしばって耐えながら、紘人にもたれかかりつつ体を支えた。彼の手はやがて上に伸びていき、心臓の音が大きくなる一方で逆らう素振りひとつできない。
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