愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 江藤さんとの電話は終わったかな?

 リビングのドアノブに手をかけ開けようとしたそのときだった。

「ええ。別れた彼女がKMシステムズの社長の娘だったんです」

 なに? 私の話? 

 一瞬、聞き間違いを疑う。今の紘人の発言はなにを意味しているのか。

 かまわず部屋に入ればいいのに、硬直してしまい手も足も動かせない。片腕で支えている真紘が身動ぎし、我に返る。少しだけ迷ったあとドアを開けてリビングに入った。

 ほぼ同じタイミングで紘人は電話を終えていた。私たちの姿を見て紘人はホッとした表情を見せる。

「真紘、起きたんだな」

「うん。おむつ換えてもいい?」

 もちろん断られるわけもなく、私はてきぱきと真紘のおむつを換えて、お茶を与える。少しだけ飲み、真紘はまたソファでつかまり立ちとつたい歩きを始めた。ちょうどいい高さでやりやすいのか、すっかり気に入ったらしい。

「さっきの電話……江藤さんから?」

 真紘の様子を見守りながら、さりげなく紘人に問いかけた。彼が電話に出たとき、私もここにいたし、今日会ったばかり人について尋ねてもおかしくないはずだ。

「ああ。仕事の話をちょっと。愛理や真紘によろしく伝えてくれって」

「そう」

 続けてさっき聞こえた件について追及するべきか迷う。とはいえ深い意味などなく、私とどこで出会ったのかとか、そういう興味本位半分の世間話だったのかもしれない。
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