愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 そんな彼の頬に今度は私から唇を寄せる。

「出て。仕事の電話かもしれないでしょ?」 

 極力冷静に伝えると、紘人はため息をついて私に口づけた。そしてゆっくりとソファから体を起こしダイニングテーブルに近づく。思えば私だけあられもない姿をしていた。慌てて下着と服を着直して、手櫛で髪を整える。

「江藤さん? さっきはどうも」

 電話に出た彼の口から飛び出た名前に、つい反応する。先ほど動物園で会った江藤秀美さん。紘人の仕事の関係者で元KMシステムズに勤めていた人だ。

 なんとなくふたりの会話を聞いてはいけない、正確には聞きたくなくてそっとリビングを出る。

 真紘、まだ寝ているかな?

 寝室のドアを慎重に開けると、真紘はベッドでは相変わらず規則正しい寝息を立てていた。両腕を上げて万歳しているポーズは赤ちゃんならではで、ぷくぷくのほっぺは思わず触りたくなる。

 ベッドの端に腰を下ろすと、気配を感じたからか目を閉じたまま真紘が首を横に振りだす。うっすらと目が開き、ゆっくりと顔をこちらに向けた。

「おはよう、真紘」

 そろそろ起きるにはちょうどいい時間だ。真紘は大きく目を見開き、満面の笑みを浮かべる。どうやら機嫌は悪くなさそうだ。

「まー」

 ごろんと寝返りした真紘を抱き上げた。

「よく寝た? お茶飲もうか」

 お茶の入っているバッグはリビングに置いてあるので、紘人を抱っこしてリビングに戻る。先におむつを換えたほうがいいかもしれない。
< 80 / 123 >

この作品をシェア

pagetop