愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 紘人はすべて承知で私に結婚を申し込み、私も彼を愛しているから結婚したい想いを一方的に語っていく。

 父はその間、余計な口を挟まず静かに私の話に耳を傾けていた。

「それで……紘人から聞いたんだけれど……紘人や江藤さんをはじめとする外注先や従業員にひどい扱いをしていたのは、崎本さんが勝手にしていたって本当なの?」

 紘人から告げられた真実。紘人も最初は社長である父の意思ですべて行われていると思っていたらしい。

 しかしいろいろ調べているうちに、社長の指示にしては妙な点がいくつかあり、そのうえで共通の人物が浮かび上がってきたそうだ。崎本繁さん。長年、父の片腕として秘書をしていた人だ。

 私の問いかけを否定も肯定もせず、父は大きくため息をついた。

「崎本の独断でしたとしても、それを把握しきれていなかった。実質、私の責任だ」

 崎本さんは紘人みたいな組織に所属していない人間や、江藤さんみたいに立場の弱い社員に犯罪にもなりかねない不正まがいのことをしていたそうだ。

 父が違和感に気づいたときには、江藤さんをはじめとする社員は辞めていて、確信を持ちつつ崎本さんを問い詰めたもののはっきりとした証拠もなく『すべては会社のために動いている』の一点張りだったらしい。

 父は自責の念に駆られつつ責任の取り方をずっと考えていたそうだ。
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