恋人たちの疵夏ーキヅナツー

補足の特別エピソード②

邂逅のヨカン



一週間ほど前の”あの夜”…

千葉の海岸はとても風が強かった

強風で花火に火がつかず、ケイコは中学時代の仲間6人と悪戦苦闘中だった

そこへ、若い男が彼女達の花火に火を燈した

それはまるで手品のように…

蚊取り線香を手にし、彼女たちの前に現れたその”手品師”がアキラだった

やっと花火の閃光が夜の海岸に放たれると、7人の女子高生は歓喜の声をあげていた

強風のなか、花火に戯れる彼女たちの元にはアキラの連れ5人も交った


...


花火のあと、13人は彼らの車2台で夜のドライブへ出かけることとなった

ところが…

どちらも5人乗りのため、3人定員オーバーだ

「3人は車の後ろ(荷台)だな。2人と1人に分かれて…。警察に見つかるとまずいから、寝そべってなきゃダメだぞ」

すぐにアキラは率先して荷台へ向かうと、ケイコも志願(?)して、アキラの隣に乗り込んだ

二人は暗く狭いスペースで、互いの吐息が聞こえるくらい近くで寝ぞべった

山道にかかるとゴロゴロところがされ、二人は何度も体が接触した

顔も下半身も…

その時、ケイコは一種、欲情していた

”もっとくっつきたい。もっと長くこうしていたい…”

そして今日…、再び二人は奇しくも”狭い空間”で再会を果たしたのだ

それは偶然というよりも、奇跡に近かったと言えまいか…

...


アキラと”話”をつけたケイコは、先に男子トイレから無事に脱出した

”私たち、再会した時も体がくっつくくらいの狭い場所だった訳か…”

ケイコがふとそんな思いを抱いていると、トイレから出たアキラは外で待ち兼ねていた追っかけの子たちに囲まれていた

そんな光景を遠目でしばらく眺めていたケイコの胸中には、とても”素直”な気持ちが込みあがってきた

”カレを独占したい…”

しかし、すぐに彼女はその気持ちに対して、こう言い聞かせていた

”あっ、イケねー。テツヤとのことを思いださなきゃ。今度好きになった人には相手のペースを大事にするんだったんだわ(苦笑)…”

ケイコは小走りしてライブホールへと戻って行った

淡い恋心が芽生えたせいか、その足取りは実に軽やかなものであった






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