恋人たちの疵夏ーキヅナツー
惨夜の一室/その2
アキラ


目が覚めると、そこはうす暗いスナックのような店の中だった

口にはガムテープが張られてて、声は出せない

体は、背もたれのある椅子に座らされた状態で、縛られてた

もう、この時点で監禁されたって、はっきり認識もしてる

「やあ…、色男さん、お目覚めのようね」

目の前でニヤつきながら、こう声をかけてきたのは、間違いなく”あの”麻衣だった

辺りを見回すと、少なくとも4人の男がいる

さっきオレを車に連れ込んだ奴らも交っていた

いずれもガラの悪そうな男たちだ

”相和会”…、自然と頭の中に、この3文字が浮かんだよ

なんなんだ!

どうしようってつもりだ!

ここはどこだ!

思い浮かぶ疑問を、片っ端から、出せない声で叫んでる

体もいろいろ動かしてみてるが、とにかく自由がきかない

ダメだ!

されるがままだ…

一体何が始まるんだ、これから…!

...


「ははは…、おたく、今日の主役だからさ。状況設定を説明するわ、まずね。はは…」

麻衣はクスリ効いてるせいか、目つきやばいし、テンションが高い

オレが主役って、頼んでないぞ!

いったい何が目的だよ!

この時点では、頭ん中パニックで、”怖い”という感覚までには、まだ至っていなかった

オレの眼を覗き込むように、やや屈んで、麻衣は話を続けたよ

「へへ…、おたくのこと目障りっていう人間、複数いてさ…。利害関係一致で、これから”こっちの都合”に付き合ってもらう事になったんだよね。まずは、初期設定ってやつからね…。へへへ…」

そう言い終わるが早いか、正面の麻衣に、いきなり膝で腹をどつかれた

それが合図のように、いつの間にやら木刀持ってた男3人がオレの周りを取り囲んだ

ここで、ようやくはっきりとした恐怖を感じることになった…

...

痛い…

ボコボコ状態だ、オレ…

だいたい10発近くは木刀、飛んできた

男たちは無言でただ、オレをぶっ叩いているだけだった

麻衣はオレの右手のすぐ前で、薄笑いを浮かべてる

なんて女だ‼

こいつ、ケイコちゃんと同じ高2だろ⁉

「その眼いいな…。アンタを”リクエスト”した面々に見せたいよ。でも、そいつら、アンタの前に堂々と顔出せないんだってよ。クソだよな、アキラさん。で、私だけだよ、顔出しは…。アハハハッ…。」

「…」

「さあ、次はお注射よ。チクッとするだけだからさ…。ハハハッ…、あっという間に終わるよ、目つぶってってもいいぞ」

”やめろ、やめろ、やめろ!”

俺はただひたすら、出ない声で叫び続けていた




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