恋人たちの疵夏ーキヅナツー
盛夏の傷跡/その14
ケイコ



「薫、また胸でっかくなったんじゃねえか。揉ませてくれって言ったら、こつかれたけど…」

当たり前だろが、相変わらず分別ねえな-

「そんで、やったのか?お前ら、もう」

思わず、「まだやってねーよ」って言ってやった

でも、なんだろか、この気分

テツヤのアホな話に付合ってると、なんか悪くない

今は”こんな事情”を抱えてるせいもあるんだろうが…

ある意味、癒されてるのかな、私

とにかく、アキラとは正反対なんだよな…


...


私、思わず聞いてみた

「もしさ、好きな子が親や学校から見放されるような、例えば犯罪みたいなね、重大なそんな事情、抱えて悩んでいたとして…。それ打ち明けられたら、テツヤ、一緒にその泥船乗れるか?一蓮托生でやれるか?」

テツヤは深く考える様子もなく、こう言った

「オレ、好きな子、一人ってあり得ないから。日々、複数主義なんで。一人の子にそこまでって、無理だわ。物理的な問題だわな」

「・・・」

こんな神経とんでるヤツに聞いた私がヌケてたわ

「でもよ、お前のペチャ、ハンパないな。揉んでやろか?」

またエロ話しかよ、暑いんだからもう勘弁してくれ


...


テツヤはこれから、栃木にある先輩の実家に行くらしい

今日泊まって、明朝、鬼怒川へ釣りに出かけるとか

「さあ、明日は1メートル級の大物釣ってくるか!」

「ああ、せいぜい100バストの巨乳でも釣ってこい」

私はそう投げやり気味に言いながら、チャリにまたがった

「いい娘いたら、紹介してくれな。とりえずペチャでも可だ」

筋金入りの女好きは、今日も言い忘れなかった

チャリを走らせる直前、振り返ると、テツヤはもう交差点脇で数人の女の子に話しかけてる

ほとんど病気だわ…


...


チャリ乗って間もなく、横の車道を黒い車がフルスピードで通過した

あの車、テツヤとだべってる時、ずっとアイドリングしてた

剣崎さんとこの張り付きだろう、きっと

アキラもこんな風に、見張られてるんだろうか

これが目の前の現実なんだな、やはり…







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