少女達の青春群像           ~舞、その愛~
 舞とスマホが見つめ合っている中、時間だけがどんどん過ぎていっている。時刻は午後10時をまわっていたが、夕飯もまだ食べていないし、お風呂にも入っていない。家族に不審そうに見られている中、ダイニングテーブルにずっといた。

 中葉君ってば、メッセージをするって言った癖に、なんで今になっても送ってくれないのよ!

 早くしないと今日が終わってしまう。それだと今日中に返事ができない。

 中葉君との約束は絶対に破りたくないのに、このままだと…

 舞はじれったくなり、スマホを手に取った。

 もう待っていられない。私の方から中葉君にメッセージを送ろう。

 そう決めてメッセージ画面を開いたが、そこで舞の動きが止まる。



 …なんて送ろう。

 いつも学校で顔を合わせているし、放課後も一緒にいるから、これといってする話題が無いのよね。

『今日はとても寒かったね』

 こんなの送られてもつまらないわよ。

『今日も小森は臭かったね』

 ダメだ、家に帰ってまであの匂いなんて思い出したくない。

『響ちゃん、大丈夫かな?』 

 これこそ家に帰ってまでしたくない話題でしょ。ここで響ちゃんの名を出して、中葉君の想いに再び火がついたらどうするの!

 中葉とメッセージのやり取りをするのなら、やはり自分達のことを話題にしたい。

 舞は少し考えた後、緊張した面持ちでスマホをタップし始めた。

『私は中葉君のことが好きです』

 よし、打てたわ。

 震える指で送信を押す。



 …送ってしまった。

 中葉君に告白めいたメッセージを送ってしまった!

 すぐに後悔したが、もう遅い。メッセージは中葉の元に届いているだろう。

 私ってば、早まってしまった?

 でも、なんだか告白したい気分だったのよ。

 さっき以上にスマホが気になってしまう。

 そ、そうだ。気を紛らわす為に、お風呂にでも…

 そう思い、椅子から立ち上がろうとした時、舞のスマホからメッセージの着信音が鳴った。

 えぇっ、早過ぎでしょ!

 もう少しは気分を落ち着かせたかったが、メッセージが届いたとあっては見ないわけにはいかない。震える手でスマホを操作する。

「えぇっ!」

 舞は驚きのあまりスマホを落としてしまった。

 落ちた先はダイニングテーブルの上。ガンッという大きな音がしたが、裏側だったので画面が割れることはなかったし、電源も落ちなかった。

 そのスマホには、中葉からのメッセージが映っていた。

『ムッチーはオレのことが好きか?オレはムッチーが好きだよ』

 何度見ても、書いてある文章は同じだった。

 ということは私と中葉君って…両想い?

 しかももしかして私ってば、中葉君に告白された?

 私のメッセージの返事にしては返ってくるのが早過ぎたような気がするもの。

 信じられない思いでテーブル上にあるスマホをじっと見つめる。

 い、いや、呑気に見ている場合じゃないわ。返事、そう、返事を書かないとダメでしょ。

 舞は再びスマホを手に持つ。そして震える手で返事を打ち始めた。
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