献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「……ちが、う……」
周囲に耳を澄ますと、ほかの女性社員たちも「穂高さん異動らしいよー」という噂話をしているのが聞こえてきた。
皆知ってるの?
どうして私にはひと言も言ってくれてなくて、ほかの人たちが先に知っているんだろう。
それに、海外に行っちゃったら、もう今のようには会えなくなる。
そんな大事なこと、どうして……。
『俺も、好き』
……あれ?
清澄くんって。
好きって言ってくれたけど、私と付き合おうとは言っていない。
ベーコンの味がしなくなり、アスパラが口の中で噛み潰せず異物のまま流し込んだ。
真っ暗な小部屋に入ったみたいに、西野さんたちの「日野さーん?」という声も、食堂のざわめきも遠くなる。
私、勘違いしていた?
両想いなら付き合うのだと、言葉にせずとも考えていた。
清澄くんも好きだって言ってくれたし、それも軽い感じの告白ではなかったと思うんだけど……。
「ああ、その子、面倒だから別れた」
長テーブルの向こうから、男性のそんな声がし、ギクリと心臓が痛んだ。
若手の男性社員のグループで、企画部の人たちだろうか。
ハキハキとしてモテそうな人たちだ。