献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「どう? 今日は混んでる?」
「結構混雑しました。穂高さんの担当先の事務員さん何人かいらしてて、皆さん異動が寂しいとおっしゃってましたよ」
「本当? うれしいな。笹川さんも、ありがとね」
「はい。……うう、私も寂しいです」
彼女が泣き真似のジェスチャーをしたため、俺は「ハハッ」と軽く笑った。
「俺これから『よつば商事』に挨拶に行くから、書類出してもらえる? 預かってたリスト今日返そうと思って」
書類をくれという意味で手を差し出したが、笹川さんは突っ立ったままだ。
「それなら、今日、よつば商事の担当者さんが店頭に来たので、お渡ししておきました」
「……え?」
俺は手を戻す。
「……誰が来た? 経理の加藤さん?」
「いえ。違う人でした。会社ではなく個人的な用事で来たみたいですよ。穂高さんがいるか聞かれましたがお出かけ中だったのでお繋ぎできませんでした。返却物があれば総務部に渡してくださるって仰ったので、お渡ししました」
「個人的な用事って?」
「払込用紙での支払です。お買い物の代金の」
「処理済みの払込用紙ある? ちょっと見せて」
俺の矢継早の質問に、彼女は首をかしげながら「はい」と用紙を取りに行った。
……嫌な予感がする。