献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

「ダメだ……昼休みでつながらない」

ヨツバは昼の一時間は留守電になっている。
だが総務部には誰かしらいるはずだ。
それこそ、愛莉とか。

報告を聞き、冷静にも鬼のような顔つきに変わった支店長へ、俺は鞄を持って走りながら「俺取り返してきます!」と伝えた。

まだ中身を見ていないかもしれない。
走れば間に合う。

外へ出て、街の中を走った。
移り変わる都会の景色と、スーツで走る俺への好奇の目。

間に合わなかったらすべてが終わる。
相手と培ってきたはずの俺と銀行への信頼が、一瞬で崩れ去ることになる。
俺はここまで懸命にやってきた。
プレッシャーに打ち勝つために取引先の事業を勉強し、信頼を得るためにひたむきに要望に向き合った。
信頼して預けてもらった資金も、情報も、大事にしてきたつもりだった。

その努力が、最後の最後に、無になる。

走りながら、情けなくも泣きたい気持ちに襲われた。
間に合え。
間に合え!

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