献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「……あの、おそらく、ですが……」
「なんだ?」
笹川さんは顔面蒼白で縮こまり、俺もおそらく、同じ顔をしている。
大変なことが起きた。
「誤返却(ごへんきゃく)が起きました」
「なっ……」
「よつば商事への書類がヨツバに渡ってしまったようです。中身は、従業員二百人分の、口座情報と給与金額」
次長は目を見開き、俺たち三人の輪はシンと静まる。
すぐに次長は「情報漏洩だ」と呆然とつぶやく。
その瞬間、俺の脳裏には、よつば商事の社長の怒り、従業員二百人への謝罪、ヨツバの不信感に満ちた反応のイメージが、映像となって次々と流れていった。
「すみませんっ……私……私……」
泣き出す笹川さんへのフォローよりも先に、俺は携帯からヨツバへ電話をかける。
その間に次長は踵を返し、支店長の元へ報告に行った。