献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「出たら? お母さんからの電話」
清澄くんは爽やかな顔でそう促した。
後押しをされると、いつもより手が震えなかった。
でも、ここでお母さんとの電話を取るのは緊張する。
せっかく素敵な場所にいるのに、私とお母さんのぎこちなさを知られるのは気まずいし。
「う、ううん。大丈夫。あとで出るね」
「どうして? 出ていいよ」
プルルル、プルルル、という音は鳴り止まず、私は少し汗ばんできた。
「……お母さんとなにを話したらいいか、よくわからなくて」
言っちゃった。
そんなことを言われてもきっと困るだろう。
家族の問題はどうしようもないもの。
「じゃあ、報告しなよ。今日、彼氏ができたって」
あ……。
「話すことなんていくらでもあるさ。そんなの、俺が毎日作ってあげるよ」
清澄くんの指先が通話ボタンをタップし、私の耳もとへと優しく持ち上げた。
いつも重かったスマホが、すごく軽い。
『もしもし。愛莉?』
「お母さん。あのね、今日──」
──ひとりで悩んでいたことも、彼と一緒ならきっと答えが出せる。
だって私たちは、この物語のヒーローとヒロインなんだから。
END


