切れない縁2 青木バージョン
おじさんとお兄さんに挨拶し、棺桶に入っている隆二に一歩ずつ近づく……

「青木のおじさん、ありがとう」と健一郎が声を掛けてくれた。

「健一郎…大丈夫か?」

「う…ん。まだ実感がなくて…
この通り顔も見れないし…
お線香はこれです。」

「ああ、健一郎、ありがとう。
ちょっと悪いが、隆二と2人にしてもらってもいいかなぁ」

「はい。じゃあまた後で」

「悪いな…」

線香をあげ、手を合わせながら心の中で隆二へ話し掛けた。

"やっぱり、お前はお人好しだったか…

バカヤロウ! これがお前の望みだったのか?
俺の忠告を無視するからこんな目に会うんだよ。
俺は怒ってんだぞ! 

なんで人生の最期が村瀬と一緒なんだよ!

きっとこの辺で幽霊の隆二と村瀬がいるんだろう。
49日まではこの世でフラフラするっていうし…

いいか、隆二お前は死んだんだぞ!
生きてる家族とはもう一緒に暮らせないんだ。
だから、絶対に家族に取り憑いたりするなよな!

また、明日来るからさ。"と心で話し掛けたあと…

そぅと棺桶に掛かっていたカバーをめくり小窓から包帯で顔がわからない隆二を見た。

「隆二、今までありがとう。じゃあな」とカバーを直して、井上の家族に挨拶して帰ってきた。
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