王子様は拗らせお姫様の虜
「温泉旅館『月の屋』は、極上の空間の提供と日本随一の質の高いサービス、接客を誇り、月の屋だけでも日本に8店舗。温泉施設やホテルなども合わせたら70を超える施設を有します。コンセプトは『夢中になるという安らぎ』だって!」

実花子が、パンフレット片手に、嬉しそうに部屋中を見て回る。

「わっ、ベッド2つあるー、ふかふかだよ!どこのメーカーだろ」

子供みたいにスプリングで弾みながら、実花子がはしゃぐ。今日というに実花子を連れて来ることが出来て、本当に良かったと思う。

本人は、すっかり忘れてるみたいだけど。

「どうせベッドは、一つしか使わないよ」

僕が、口角を上げたのを見上げながら、実花子が、もうっ、と頬を膨らませた。

「わ、千歳!みてみて!テラスからの景色凄い!」

この月の屋の施設は、軽井沢の森の谷合に建てられいて、施設の中央に向かって川が流れている。その川の水を利用して湖に見えるようなに、中央に水を溜めて、施設自体がまるめ浮かんでいるように見える。

「千歳……」

テラスに肘を預けながら、実花子が、控えめに唇を開いた。
< 10 / 20 >

この作品をシェア

pagetop