王子様は拗らせお姫様の虜
「おはよ」
「棚田さん、おはよう」
更衣室を出たところで、私は、千歳と鉢合わせた。
昨日は、結局千歳は泊まっていき朝早く帰って行ったが、散々ベッドでも意地悪された身体は、千歳と会えば、また火照りそうだ。
挨拶を交わせば、何事もなかったのように、
そのまま千歳は、仕立てのよいスーツを見に纏い、革靴を鳴らしながら、企画営業第一課の事務所へと消えていく。
(ちょっとくらい、その涼しい顔どうにかならない訳っ)
千歳と付き合い初めて、約1ヶ月、本当にあっという間だった。会社では、私と交際していることなど、千歳は、微塵も感じさせない。
(こりゃ、浮気されてもわかんないな)
疑ってる訳でもなければ、今後されるかもなんて事も今は思ってはいないが、きっと、千歳は、浮気さえも完璧にして見せるのだろう。
「本当、出来ない事ないのね……」
私は、小さく溜息を吐き出した。何でもできてしまう千歳の隣が私でいいのか、イマイチ自信がない。
颯の時は、こんな風に思った事一度もなかったのに。