ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「どういうことです?」

そのうちわかると言われ、教えてもらえなかった。

「顔を合わせる機会が増えたのに、文は全然俺との距離を縮めてくれなかっただろ。俺はその状況に苛ついていたし、焦っていた。文は仕事柄着飾るようになって、職場で人気も出始めた。
極めつけに取引先から変な縁談も飛び込んできて、気が気じゃなかったよ。そこで、パーティーで起きた事故で……魔が差した」

文が、階段から落ちたことだ。
あの事故から、この生活は始まったから。

「人生最大の嘘で、大博打だった。……賢に言い寄られているところを見て嫉妬したよ。
俺さえまだ壁があるのにって。他の奴に取られたくないと、強く思った。だから、文が記憶を失ったと嘘をついて恋人のフリをしたんだ……」

今となっては、文もなぜ信じたのかわからない。
病院で目覚めてすぐに聞いたし、宝城にも混乱することがあるなどと診断されたから、余計に真実味が増した気がする。

「宝城さんまでぐるだったなんて……酷いですね。おかげですっかり騙されました」

宝城の言う貸しとはこれのことだ。

「気付いて欲しかったんだ。文が感じるドキドキは、嫌いではなくて好きの気持からだってね。吊り橋効果があるのなら、逆もまたあって然り」

「好きを、嫌いって勘違いしてたってことですか?」

あながち間違っていない気がして恥ずかしい。

「でもそれ、ポジティブすぎません? 本当にわたしが苦手だと思っていたらどうしたんです?」

「文の場合は特別だよ。だって、顔を赤くして逃げ回るんだよ? いっつも熱っぽい視線を送ってくるし。もう告白されているようなものなのに、会話さえまともにさせてくれないから……そういうところも可愛かったけど」

そんな自覚はない。
つくづく自分の経験のなさが嫌になる。
要するに、何が恋かもわからないほどの子供だったと言うことだ。
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