ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
訴状……もとい招待状。
大変なミッションがふりかかったのは、それから数日後の夜。
和風庭園の美しい、老舗の料亭での出来事だ。
昼過ぎの商談で、取引先の大山商事とうまく契約をまとめることが出来、専務の大山に、「今夜一杯どうだね」と誘われた。
吾妻と、契約書を作成した七生、さらには「そっちの秘書さんも」と文も誘われ、相手方の秘書も交えた会食をが開かれることになった。
大山商事は海外からの原料の輸入に一役買ってくれる商社だ。
とても大事な取引先からの誘いで、吾妻も「今夜は都合が」などと断ることも出来ない。
誘われても、接待に回るのはこちらの会社だ。
居酒屋で一杯というわけにはいかなくて、文は夕方までの数時間のうちに、大山商事側の参加者の好みと喫煙傾向やさらにはアレルギーまで把握し、次の会議の合間に会場を押さえるのに奔走した。
個室でくつろげて、それなりのコースとお酒の種類があるところ。
あっても以前使用していたり、さらには週末で殆どの店が予約がうまっており難しかった。
巻き添えを食らった七生も協力してくれて、やっと見つけた料亭だ。
「穴場じゃないか。さすが交友関係が広い吾妻君だ。良い店を知っている」
大山は上機嫌にお酒を煽った。
必死に探し当てた店を褒められ、文はテーブルの下でよっしゃと拳を作る。
他の仕事の合間に頑張ったのだ。
七生にそれを見られて、クスリと笑われる。
お店で子供のような喜び方をして気恥ずかしくなったが、なんだか達成感があった。
しかし、自分だけの力だけでは無理であった。