ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「でも、会社の第一線を走る者として自信を持たなくちゃいけないんだって、わたしはみなさんに教わりました」

自信を持つことは良いことだ。
すると三宅は寂しそうに笑った。

「例えば化粧を褒められれば、この口紅つけてるわたし綺麗でしょって思ってたの。
あなたのように、季節と肌のバランスを考え、どの肌色にどの発色が映えるか。どんな思いでそれを準備したかなんて伝えたことないの。
それを説明しだした旭川さんを見たときに、愕然とした。あ、わたしにないものはこれだって」

「それはわたしが研究者だったからですよ。マニアックだって言われます」

「うん。でもわたしは、製品に誇りをもっていたわけじゃない。完璧なマネキンであればいいと思ってたのは確かなの。
吾妻副社長は、ベクトル向ける方向を間違ってるぞって言いたかったんだと思う」

お説教かと思っていたのに、なんともむず痒い時間となった。

「わ、わたしうれしいです。ポンコツなのはわかってるけど、自信を持って良い部分もあるんだって思えて。明日からまた頑張ります」

あのまま研究だけやっていたら、視野が狭くなっていたように思う。誰がどの部署で、どんな思いで仕事をしているのか知ることがなかった。

ラボに戻りたい気持ちはかわらないけれど、ここの経験を無駄にしないようにして、成長して戻りたい。

「ちょっと褒めたからって、調子に乗らないでよ? 旭川さんはまだまだ失敗も多いし、秘書とはどんなものかをまったくわかっていないんだから」

そこからはしばらく説教にかわってしまう。

「あと、気になってたんだけど、間宮さんとどうなってるの?」

「ごふっ……ゴホッゴホッゴホッ」

いきなり特大の爆弾が被弾した。
サンチュに巻いた肉を、大口開けて食べていた文は噎せてしまう。
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