落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化決定】

「ローズマリー様。横から口を挟んで申し訳ありませんが、今、『確実な道』を選ぶべきと仰いましたか? 殿下の解呪をするために、運命の相手にファーストキスを捧げる。それ以上にもっと確実な方法があるのでしょうか?」


 もちろん私の恋占いだって、百パーセント的中の自信はある。でももっと確実な方法があるなら、すぐにでも殿下の呪いを解いて差し上げたい。あの胸の呪詛文字を目にしてしまったから尚更だ。

 ローズマリー様はアーノルト殿下と目を合わせ、一息ついて私の方に振り返った。

「もうアーノルト殿下にはお伝えしているのだけど……。殿下の呪いを解く方法は三つあるわ」
「三つ! 何でしょうか、私にも教えて下さい。例え落ちこぼれでも、私も元・聖女候補生です。イングリス神に仕える者として、呪いを解くお手伝いをしたいのです」
「分かったわ。一つ目はディアも知っている通り、殿下が運命の相手にファーストキスを捧げること。そして二つ目は、呪いをかけた張本人を消すこと」
「消す……」

 確かに、呪いをかけた術者がいなくなれば、殿下の呪いも消えるはずだ。しかし、『消す』とは穏やかではない。それに、誰が殿下に呪いをかけたのかは分かっていないのだ。
 すると、二つ目の選択肢は消えたことになる。

「三つ目は? 三つ目は何でしょうか!」

 思わず立ち上がって詰め寄ると、ローズマリー様は少し顔を赤くして下を向いてしまった。

「ローズマリー様! 三つ目の解呪方法は」
「ディア。私から説明しよう」

 アーノルト殿下は鼻息を荒げる私を落ち着かせようと、両肩に手を置いて私を椅子に引き戻した。

「三つ目の解呪方法は」
「はい」
「運命の相手の代わりに、私の胸にあるこの呪詛文字を読み解ける強い魔力を持った者にファーストキスを捧げること。つまり私がローズマリー嬢にキスをすれば、呪いは解ける」
「…………は?!」

(――そんな最終手段があったの?! だから殿下は呪われているくせにこんなに落ち着いてたんだ)

 あっけに取られた私は、ついつい元も子もない台詞を口にしてしまった。

「あの、それでは今ここでキスしたらいいのではないでしょうか……?」
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