少女達の青春群像     ~途切れなかった絆~
 居酒屋とカラオケ店は車で5分くらいの距離だ。世間話なんかしているとあっという間に着いてしまう。

 カラオケ店に到着すると、寒い中だというのにみんな外で待っていた。

「待たせてごめーん!」

 車から降りてみんなに謝る響歌。みんな次々と店内に入っていく。

 最後に響歌と黒崎が店内に入ったところで、黒崎がみんなに向かって言った。

「オレら、つき合うことになったし!」

 …は?

 響歌の動きが制止した。

 オレらって…まさか、私と黒崎君?

 はぁぁああ!

 ちょっと待ってよ。そんなことを言ったら、みんな冗談でも凄く喜んでしまうじゃない!

 案の定、みんな盛り上がった。歩の顔なんて、もう極上ものだ。

「それがいいわ」

「それがいい!」

「うん、そうだよね」

 そんな声まで飛んでいる。

 って、待って。ちょっとみんな、おかしいでしょ。なんで『それがいい』になるのよ。普通は納得するよりも驚くし、『ほんと?』とか言って確認するでしょ!

 それでも唯一、そうした人がいた。

 それは受付を済ませて部屋へ向かおうとしている時だった。

「本当につき合うの?」

 紗智が真面目な顔で黒崎に訊ねたが、黒崎は真面目に応じない。

「ん?」

 笑顔でそれだけ言って、紗智の質問を交わしていた。

 まぁ…さっちゃんとしては気になるか。

 さっちゃんは高校の時の私の気持ちを知っているけど、卒業後はパッタリと私とのつき合いが無くなったから、私と黒崎君のあれこれを知らないもの。ついでに橋本君のも。

 でもさ、みんなは冗談だってわかっているよね。ねぇ、そうだよね?

 ちょっと、黒崎君もなんで誤魔化すのよ。ちゃんと訂正してよ!

 響歌は心の中で黒崎を責めたが、口に出したりはしなかった。そんなことをしてまた話を戻すのが嫌だったのだ。
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