【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


親友である彼女に隠し事はしたくなかったからだ。


昼休みになっても続く訴えに、私は少しずるい手を使った。


それは志貴の名前を出すこと。


なぜなら、私が家族との時間を大切にしていることを新那は誰よりも知っているからだ。

『お金と時間に余裕ができたら、志貴と過ごせる時間がもっと増えると思うの』

こんな言い方をすれば新那が困るのはわかっていた。

でも、生活をするためにはどうしてもお金が必要なのだ。

それに、櫻子さんのこともある。

今さら身代わりを断るなんて無責任なことはできない。

大切な人を守りたいという怜央の気持ちが、私には痛いほどわかるから。

もちろん、志貴との時間を大切にしたいのも本音。

来年、志貴が高校に進学してバイトを始めたら、顔を合わせる時間はこれまで以上に減ってしまうだろう。

その前に少しでも多くの時間を志貴と過ごしたい。



5限目開始のチャイムが鳴る寸前、どうにか新那の説得に成功した私。

だけど、放課後になっても彼女は私のそばから離れようとしない。

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