【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「風邪……?」
何のこと?
私はこのとおりピンピンしている。
「怜央、これどういうこと?」
スマホを彼の方へと傾ける。
「弟には香坂に連れ去られた話なんてできないだろ。だから、俺の看病のために泊まるって話になってる」
志貴は私の仕事を家政婦だと思っている。
私がそう伝えたからだ。
「そうだったんだ。黙っててくれてありがとう。でも、やっぱり泊まるわけには……」
「あと香坂のことはトキが見張ってる。これでも帰らなきゃだめか?」
怜央は蓮見と書かれた表札の前で立ち止まると、私の目をじっと見つめてきた。
志貴のそばには真宙くんと冬馬くんがいて、香坂のことはトキくんが見張ってくれている。
それなら心配はいらないのかもしれない。
だけど……。
「いいのかな、皆に迷惑をかけて」
私が家に帰れば皆は楽になる。
「んなこと気にしてたのかよ。前にも言っただろ?姫はチームで護るって。うちには瑠佳のことを迷惑だなんて思う奴いねーよ」
「………うん」
「じゃあ、もういいだろ?」
怜央はそう言ってドアを開けると、私を中へと招き入れた。