【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「風邪……?」

何のこと?

私はこのとおりピンピンしている。


「怜央、これどういうこと?」

スマホを彼の方へと傾ける。

「弟には香坂に連れ去られた話なんてできないだろ。だから、俺の看病のために泊まるって話になってる」

志貴は私の仕事を家政婦だと思っている。

私がそう伝えたからだ。


「そうだったんだ。黙っててくれてありがとう。でも、やっぱり泊まるわけには……」



「あと香坂のことはトキが見張ってる。これでも帰らなきゃだめか?」


怜央は蓮見と書かれた表札の前で立ち止まると、私の目をじっと見つめてきた。



志貴のそばには真宙くんと冬馬くんがいて、香坂のことはトキくんが見張ってくれている。


それなら心配はいらないのかもしれない。

だけど……。


「いいのかな、皆に迷惑をかけて」

私が家に帰れば皆は楽になる。


「んなこと気にしてたのかよ。前にも言っただろ?姫はチームで護るって。うちには瑠佳のことを迷惑だなんて思う奴いねーよ」


「………うん」

「じゃあ、もういいだろ?」


怜央はそう言ってドアを開けると、私を中へと招き入れた。




< 175 / 260 >

この作品をシェア

pagetop