主役になれないお姫さま
「…と言うわけなんです。それから、1課の木村さんが山田さんが経理の子達に三浦の陰口を言いふらしてる場に偶然居合わせたことがあったようです。なので、一度、三浦が嫌がらせでも受けてるのか?って聞かれたことがあるんです。」

「なぜ詩乃がそんなに目の敵にされる?」

「僕は佐々木さんと三浦が付き合ってるのを知った山田さんの嫉妬ではないかと思ってるんですが…。何度も言う様に証拠が…。木村さんが経理の子たちに尋ねても直ぐにはぐらかしてしまうそうで…。」

女嫉妬は何よりもタチが悪い。

「何よりも本人があまり気にしていないので…、いや、気にしない様にしているので、僕は騒ぎたてる様な事をしたくないんです。」

「話はわかった。俺も気を配っておくよ。」

詩乃の性格からして他人に告げ口をしたりせず自分で解決することを望むはずだ。それに社員同士の輪を乱すようなこともしたがらないだろう。だから佐々木と別れて俺と出会うまでの数ヶ月、詩乃は失恋の痛みと共に誰にも文句を言わずに1人で耐えていたのだ。

その上、2人の結婚式に招待されたら同期としては断りにくかったのだろう。

 そりゃ、飲みたくもなるわな…。

詩乃と出会ったあの夜を思い出す。

「ただの着任されたばかりの上司でしたら直ぐにはこんな話で呼び出したりなんかしなかったんですが、三浦と付き合っていると聞いたので…。どうぞ、彼女をよろしくお願いします。」

と言い、吉川は深々と頭を下げた。

詩乃の話が終わったあとは和やかに仕事の話をした。
俺がアドバイザーとして渡り歩いた社名を聞くと『横谷部長代理はガチですごい人だったんですね!!』と目を輝かせていた。

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