朝なけに
「お前だって兄ちゃんと一緒で、本当は俺の事なんて好きじゃねえんだろ」


それが自分に向けられた言葉だとすぐに気付かなかった。


「急に現れて、俺の事がなんで好きなんだよ…」


「中さん…私は、中さんの事本当に好きなのに」


「うっせぇな!俺の事好きだとか信用出来ねえんだよ。
お前だけじゃなく、他の奴もみんな」


中さんの表情は怒っているように険しいのに、なんだか悲しんでいるように感じる。


「私と中さん、この1ヶ月毎日一緒に居たのに…」


今、私が何を言っても中さんには届かないのだろう。
私の言葉なんて、聞いてない。
中さんが急にこんな事を言い出したのは、お兄さんである一夜さんの事でだろう。


大好きだったお兄さんに憎まれていた事が、中さんにとって大きな傷として今も残っているのだろう。
先程の一枝さんの言葉で、中さんのその心の傷が大きく開いて…。


自分が誰かから愛されている事が信じられない。


「別れよう」


「嫌だ…」


私は必死に首を横に振っていた。


「鍵、返せよ!」


中さんは強引に私から鞄を取り上げようとする。


「辞めて!」


私は必死に鞄を掴み抵抗するが、すぐに奪い取られる。
中さんは私のパスケースから、合鍵として渡されていた中さんのマンションの部屋のカードキーを取った。


「中さん!」


「もう、俺の前に現れるな…。頼むから」


私よりも中さんの方が苦しそうで、突き返された鞄を黙って受け取った。
何かを言わないと、本当にこのまま中さんと終わりになってしまうかもしれない。


けど、言葉がでなくて。


これ以上中さんを傷付ける事が怖くて、私に背を向けて歩いて行く中さんを追い掛けられなかった。


< 166 / 166 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

夜と遊ぶ

総文字数/151,611

恋愛(キケン・ダーク)215ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
構成員5千人以上と言われている、指定暴力団 聖王会。 彼はその聖王会の若き3代目会長。 加賀見 一夜。 近付いたら危険だと分かっているのに、 綾瀬真湖はそんな彼に惹かれて行く。 「真湖ちゃんがそうなんだって、 初めから分かっていたよ」 「知ってて、一夜は私を…」 秘密を抱えた、2人。 夜の闇に紛れ、2人は恋に堕ちて行く。
betrayal~元彼御曹司との不倫~

総文字数/30,009

恋愛(キケン・ダーク)50ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
5年前に別れた彼が上司として再び私の前に現れた。 「俺達やり直さない?」 彼は既婚者。 これは、不倫…。 私には彼氏が居るのに、その彼氏に裏切られ…。 本田十和子♀(28)営業 × 中村春馬♂(35)営業2部部長 御曹司
trade

総文字数/93,326

恋愛(キケン・ダーク)129ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
突然居なくなった、大好きな彼、武田蒼。 数年後、再会した蒼は、全てが別人になっていた。 上杉製菓の御曹司で、上杉朱と名乗った。 そして、同じ時期に出会ったヤクザの組長の息子であり、ブルークローバーグループ社長の一枝にも、心惹かれて行く。 幸せになれるのは、私が愛する人か、私を愛してくれる人か。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop