朝なけに
片思い
中さんの少し後を着いていく。
エントランスを抜けエレベーターに乗り、このマンションの最上階の22階フロアへと行く。


廊下を歩くと、見えた景色の高さに圧倒される。
見渡す限り平面な田舎育ちで、今住んでるワンルームマンションも5階建ての3階だし。
ちょっと塀に近付き下を見てみると、地面が遠くて足がすくむ。


「お前、何やってんだ?」


本当に、なにやってんだ、って顔。
このマンションに住んでいる中さんからしたら、特別凄くも珍しくもない光景だろうし。


「観光地のタワー以外で、こんな高い場所とか上った事ないから」


地上よりも、ちょっと風も強いな。


「ああ。お前ここら辺の人間じゃないのか?」


中さんのそれが、どの辺り迄を指すのかは分からないけど。


「私、S県から大学進学で2ヶ月程前に、こっちに出て来たばかりなんです」


「S県?また何もなさそうな所だな?
海沿い?」


「いえ。私は海から遠い内陸部の、Y市の方なんですけど」


「Y市?知らねぇ」


そう笑う中さんの顔に、キュンとして、やっぱり私はこの人が好きでたまらないと思った。


< 26 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop