朝なけに
デート
結局、その後なかなか寝付けなくて。
明け方近くにやっと眠り、9時過ぎに目が覚めた。
中さんは気持ち良さそうに寝ていて、その寝顔を暫く眺めてからベッドを出た。


言われていたように勝手にシャワーを浴びてリビングに戻ると中さんが起きていた。
ソファーに深く座り、眠そうな顔で煙草を吸っている。
まだコンタクトを付けてないのか、赤いフレームの眼鏡姿。


「おはようございます」


「ああ」


そう言って、中さんは煙草を灰皿に押し付け火を消した。
ふと気付いたが、最初の夜以降は私の前で吸わないようにしてくれているんじゃないだろうか?



「あの、煙草気を使わず吸って下さいね」


「べつに、元々そんなに吸う方じゃないから」


やはり、私に気を使って吸わないんだと、そのやり取りで分かる。


私は中さんの隣に腰を下ろした。
ピタリと腕と腕が触れ合うように。
中さんの肌は温かいな。


「どっか行きたい所あるか?」


唐突に訊かれ、本当に今日何処か一緒に出掛けてくれるんだ、と嬉しくなる。


「中さんと一緒なら何処でもいいです!」


「そういうのいいから。
マジで考えろ」


中さんとの、その温度差。
でも、そんな事で落ち込まない。


「都会の街をブラブラしてみたいです!」


うん。それがいい!
遊園地や水族館は地元にデカイのがある。
距離はあるけど、海もある。
山も近いからキャンプとかも興味ないし。


「もっと他にねぇのか?」


「ないです!」


そう言い切ると、都会なぁ、と中さんは考えている。
その表情を見ながら私は嬉しくてクスクス笑う。


< 86 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop