Rain, rain later
 敬愛する逢里《あいり》お姉ちゃん。
 あなたの妹には想い人ができました。
 そして(無理矢理だけど)ちょっと接近できました。
 お姉ちゃんになったつもりで私が動いてるって言ったら、お姉ちゃんきっと怒るよね。自分以外自分じゃないんだから、って。
 ごめんね。でもありがと。おかげで仮衣の強さが持てた。
 私じゃだめなんだもん。だけど近づきたいこの気持ち、恋を知ってるお姉ちゃんなら分かってくれるんじゃないかな。ああでも、お姉ちゃんは矛盾と不安がキライだもんね。私じゃだめなんて、絶対考えないよね。
 それはお姉ちゃんだからできること。
 おねがい、許してね。
 お姉ちゃんパワーは偉大なのだ。


「はやく、おきて」
 外界から隔離された、白い空間。
 独特で清潔な香りが部屋中に充満して、とても不快だ。
「……ねー……」
 でも、お姉ちゃんがいる。
 色の抜けた、明るい髪先をなでる。
 私の倍はある、長い髪。
 プールの塩素で傷んでいたけど、今はもう本来の艶を取り戻している。
 お姉ちゃんが横たわるベッドに顔を伏せると、綺麗な茶髪に黒々しい私の髪が重なった。
「ねえ、お姉ちゃんの彼氏ってどんな人」
 応えはない。
 あるはずない、わけでもない。
「きっとさ。かっこよくて、優しくて、背が高くて」
 ぴくりともしない瞼を見つめる。
「そんで、自分をしっかり持ってる人だよね……」
 私と同じ鼻の形をしてる。
「私の好きな人はねぇ……」

 お姉ちゃん。
 逢里は、昏睡状態なのだ。
 もう半年になる。
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