後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「今日はそなたに贈り物があるんだ。もちろん、楊静妃にもね」

喩良妃は嬉しそうに殿下に抱きつき、殿下も愛おしそうに抱き返している。
殿下の寵妃というのが分かる。だが、玲雲には分からないことがある。

(殿下は姐姐を愛しているのに、なぜ喩良妃の方が寵愛されているの……?)

確かに徐美凰は寵愛されている。だが、王妃や喩良妃、楊静妃の次にだ。

「扇子を贈ろうと思ったんだが……海儸はもうあるようだから、郭御華にあげようか」

「で、殿下っ!」

殿下は喩良妃が手に扇子を持っているのを見て、贈ろうとしていた扇子を玲雲の方へ渡そうとした。それに驚いた喩良妃は慌てて声を掛ける。

「どうした、海儸?」

「殿下からもらえる物でしたら、なんでも嬉しいですわ」

「だが、同じ物を二つもいらないだろう?それに、これをあげたとしても、その扇子はどうするのだ?」

「で、でしたら心配はございませんわ!これは美しい柄ですので郭御華が欲しがっていましたの。あげようと思っていたので、ちょ、ちょうど良いですわ。ほ、ほら!あなたが欲しがっていた扇子よ」

「こ、こんな素敵な扇子をいただけて光栄ですわ……か、感謝いたします」

喩良妃からの圧に、無理やり話を合わせる。

「そうかい?なら、予定通りにこれは海儸に贈ろう」

「感謝いたしますわ、殿下」

喜んでいる喩良妃をよそに、玲雲は返ってきた扇子を眺めながら、ある考えに辿(たど)り着く。



< 40 / 69 >

この作品をシェア

pagetop