ソルティキャップ
仲間
とりあえず、俺は捻挫している両足が治るまで、入院することになった。
右腕と両足が使えないとなると、かなり苦労が多い。そのせいで情緒も沈んでいた。
「俺、どうして男の子を助けたりなんかしたんだろう。」
俺がそう呟くと、見舞いに来た鮫島はベット横の椅子に座った。
「お前のしたことは、間違ってなんかねぇよ。」
「だけど、そのせいでこんな怪我して。お前らにも迷惑かけて。」
鮫島はやれやれと言わんばかりの様子で、はぁっとため息をついた。
「あのなぁ、お前が思うほどお前は強くないんだよ。お前がいなくなると、俺らは弱小になるとでも言うのか?お前1人いなくたって、俺らは負けたりしねぇ。ちゃんと勝ってくるから。安心して見てろ。」
俺の心はふっと軽くなった。
「ってか陽介、お前生きてただけ奇跡なんだろ?」
俺が事故に遭った時、直前に運転士がブレーキを踏んでいなかったら、今頃俺は空の上だったらしい。
「生きたくても生きられない人だっている。そもそも生まれて来れない子だっている。そんな世界で、お前はあんな事故に遭っても生きてるんだ。だったらせめて楽しそうに生きろよ。そんな暗い顔したところで、ただ時間が過ぎていくだけなんだぞ?」
確か、本当は鮫島には弟が出来るはずだった。
だけど、死産となってしまったせいで弟に会えなかったと、涙ぐみながら話してくれたのを覚えている。
そのせいか、この言葉にはやけに深みがあった。
「わりぃ、そろそろ部活戻らなきゃ。これ、買ってきたから。これ食って元気出せよ。」
そう言って鮫島が俺に渡したビニール袋には、俺がいつも食べているエネルギーゼリーが入っていた。
「あ、ありがとうな。」
俺は去っていく鮫島に慌てて言った。鮫島は片手を挙げるだけして、病室を出て行った。
鮫島の背中は、俺が知っているよりもずっとたくましく、大きかった。
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